信心のことば
社会を心の花園と念じて和やかに生きましょう。
社会を心の花園と念ずるは、『維摩経』に見る"仏国土造立(つくる)"の願いに通じます。仏国土造立というのは、真実の仏法が生きている理想社会を、この世に実現しようと心がけることであります。
『維摩経』の説く仏国土造立の念願は、決して観念論でも理想論でもありません。政治や経済の理念の底に、仏さまの教えを生かし、その教に基づいた生活を国民一人一人がしてゆくなら、確実に世の中は理想社会に近づきよくなっていきます。
「和やかに生きる」とは、ただ平穏無事に仲よく生きようという単純な希望ではありません。仏教思想では、多くの因と縁との出会いの結果を「和」といっています。聖徳太子が、『憲法十七条』の第一条で「和をもって貴しとなす」といわれるのは、「因縁の法」を貴ぶことを意味しています。因縁の法を信じ、因縁の法にしたがうなら、人間同士の間も、また、社会も円満で平和になり、花園の仏国土造立につながってゆくのであります。
「和を貴ぶ」ということを人生論でいうと、人と人との出会い、めぐりあいを大切に尊重するということであります。
また、聖徳太子が「杵ふことなきを宗とせよ」と示されているのは、因縁の法に背くことのない生き方をさしています。
因縁の法とは、ものごとはすべて、さまざまな原因(因)と条件(縁)がかかわりあって生じている道理をいいます。この道理を無視したときあらゆる不幸が生じてくるのであります。
因縁の理法・道理に目覚めて日暮らしするところに真の人間の生き方が生まれてきます。